■相談事例
相談者様は、本件依頼時40代の女性です。相談者様は、相手方である夫(以下、「相手方」と言います。)から離婚訴訟を提起されていました。
相談者様は、当初、別の事務所の弁護士に依頼して応訴していたのですが、良好な信頼関係も築けなかったことから、その弁護士に辞任されてしまいました。
そのような中で、当事務所の弁護士に相談した結果、本件事件を委任することにしました。
■解決結果
1.相談者様の意向は、絶対に同居して生活しているお子様と別れたくないというものでした。そこで、弁護士は離婚について争うとともに、仮に離婚が認められたとしても親権者を相談者様にすることを第1目的としました。そのうえで、離婚が認められた場合に備えて財産分与、養育費、年金分割の請求をしました。
2.親権者については、相手方にもそれなりに有利な証拠があったものの、離婚調停と平行して申し立てられた面会交流審判で、相手方に直接の面会交流が認められず、年3回の写真等の送付に制限されました(詳しくはこちら)。直接面会交流が実施できない人物が親権者となることは考え難いため、仮に離婚が認められた場合の親権者については早期の段階でご相談者様にほぼ決まりました。
3.離婚請求については、当初婚姻関係破綻がないことや相手方の暴力や過去の不貞による有責配偶者性を主張しましたが、今一つ決め手に欠け、実質的な別居期間を考慮すると相手方の離婚請求が認められてしまう可能性がありました。
また、財産分与についても基準時、相手方が婚姻前から高所得の有資格者であったことを理由とした財産分与の割合、不動産の評価額など多数の争点が形成され、一筋縄ではいかない状況でした。
養育費についても、相手方の収入が高かかったことから、当方が当時の養育費算定表を超える金額の養育費を求めたため、この点でも激しい争いがありました。
4.こうした状況の中、相手方とその過去の不貞相手(以下、「不貞相手」と言います。)が再び交際しているのではないかという疑いが、相談者様が集めてきた相手方らのSNSのページ等から生じました。
過去に相談者様は不貞のことで、相手方との接触禁止を内容に含む示談をしていたので、接触のみならず、交際をしていることが立証できれば、相手方に有責配偶者性を強く基礎づけることになります。
ただ、これらの情報だけでは証拠として弱かったので、より強い証拠を入手すべく、弁護士自らが何度も相手方や不貞相手の住居の周辺等を調査した結果、特定の曜日に相手方が自宅にいる可能性、そのタイミングで不貞相手も相手方宅にいる可能性が高いとの予測を立てることができました。
そして、この情報をもとに探偵業者に調査を依頼しました。事前の弁護士の調査で調査時間帯も絞りこむことができたので、比較的安価で調査を依頼することができました(相談者様に高額の調査料金を負担することは困難でした。)。
そして、探偵業者から、調査後に、調査日に相手方自宅から、相手方と不貞相手が自宅から出てくる場面、その後、相手方と不貞相手が買い物に出て、相手方宅に戻ってくる場面及びその後長時間不貞相手が滞在していた場面の写真とその状況を説明した報告書が提供されました。
この状況から、少なくとも接触禁止の示談に違反していることはもちろんのこと、その時点で相手方と不貞相手が交際を伺わせるような証拠を獲得することができ、SNSのデータ等と合わせると二人が交際していることが明確になりました。その段階で、相手方に対して慰謝料請求の反訴、不貞相手に対して慰謝料請求の訴訟提起を行いました。ここで一つ考えを巡らせて、不貞相手の訴状の送達先を住民票上の住所ではなく、相手方の住所としたところ、相手方が同居人に対する郵便として訴状を受領しました。この事実も不貞関係を立証する事情として用いました。
そして、決め手として、相手方に対する反対尋問で、相手方が現在不貞相手と同棲していることを認める発言を引き出すことができ、相手方が相談者と別居開始後、長期間にわたって不貞関係にあったことを立証することができました。
5.そして、最終準備書面で、各証拠の持つ意味を合理的かつ丁寧に主張し、相手方が有責配偶者であり、離婚が認められないことを明らかにしました。その後、和解協議の機会が設けられましたが、相手方は、裁判官が不貞関係について認める方向であるとの心証開示をしたにもかかわらず、強気な姿勢を崩さず和解協議は決裂しました。最終的に第1審判決は、相手方の不貞行為による有責配偶者性を丁寧に認定して相手方の離婚請求を棄却した上、相手方と不貞相手に慰謝料の支払い命ずる仮執行宣言付き判決を言い渡しました。
6.当然のことながら、相手方も不貞相手は控訴してきました。こちらも、一歩も引かない意思を示すべく、認められなかった慰謝料請求分の控訴をするとともに、引き続き、養育費、財産分与、年金分割の附帯処分の申立てを行いました。さらに相手方に対してプレッシャーをかけるため、一審で認められた慰謝料請求の仮執行宣言付き判決を使って、相手方の預金312万7696円を差し押さえました。
7.控訴審でも相手方の不貞行為を中心に主張を尽くした結果、和解協議の席上、高等裁判所は、第1審判決と同様に相手方と不貞相手の不貞関係を認める心証開示を行い、これを前提に和解協議を行いました。相手方としては、是が非でも離婚したかったようで、こちらの要求を次々と飲んでいきました。 最終的に、離婚には応じることになったものの、①お子様の親権者はご相談者様、②養育費はお子様が22歳になるまで月額25万円、③既に取り立てた312万7696円は相談者様のものとする、④相談者様は財産分与として4000万円取得、⑤年金分割の按分割合を0.5とするなどを内容とする訴訟上の和解が成立しました。
■弁護士のコメント
最終的に有利な解決を導くことができたのは、不貞関係の立証に成功したからだと思います。有責配偶者と認定された判決が高等裁判所でも下されると、まだ小さいお子様が独り立ちするまで婚姻関係を継続しなければならないという恐怖が相手方にあったのだと思います。
最終的に有利な解決をすることができ、相談者様にも大変喜んでいただくことができました。
私自身も、何度も相手方らの住居周辺を調査する、しつこいくらい丁寧に主張立証するといった泥臭く、地道に戦うという自分らしい戦いをすることができました。今回の解決結果そのものも嬉しく思っていますが、そのことをとても誇りに思っています。