内縁関係について
1.内縁関係とは
内縁とは、男女が婚姻の意思をもって共同生活を営み、社会的には夫婦として認められる実体があるにもかかわらず、婚姻届がなされていないために法律上の夫婦とならない関係を言います。つまり、①男女間の婚姻の意思と②共同生活が内縁関係認められる要件となります。
内縁関係の場合、婚姻の場合と違って当事者の関係が戸籍謄本などに載っているわけではありません。紛争の場合、「そもそも内縁という関係ではなかった」という反論が相手方なされることが多く、厳密な立証が求められることが多いです。一緒に住んでいた事実はもちろん、他の人々からどのように当事者が見られていたか(夫婦として認識されていたか。)などの事実が重要となります。
2.内縁関係の解消
内縁関係は、婚姻関係と異なり、届出などの手続が必要ではありません。相手方の合意や正当事由などがなくても一方的に終了させることができます。
また、内縁関係は当事者の死亡によって当然に終了します。
3.内縁関係の解消に伴う慰謝料請求
内縁関係は正当な事由がなくとも一方的に終了させることができますが、正当な事由がない場合には、内縁の不当破棄に該当します。この場合、一般的に不当破棄をした者は破棄された者に対して不法行為に基づく慰謝料等の損害賠償義務を負うことになります。
どのような場合が正当事由に該当するかは、一概に判断することはできません。個々の内縁解消までのプロセスにおける当事者の行為をもとに判断することになります。
4.生前の内縁解消に伴う財産分与請求権
生前の離別に伴う財産分与については財産分与請求権が認められています(民法768条類推適用)。内縁の不当破棄にあたらないような事案や合意による内縁の解消の場合であっても、一方当事者から他方当事者に対する財産分与請求ができます。また、家庭裁判所の手続を利用することも可能です。
5.死亡による内縁解消の場合の財産の清算
当事者の一方の死亡による財産分与請求権は認められていません(最高裁判所平成12年3月10日)。したがって、生存している内縁配偶者は、死亡した内縁配偶者の相続人に対して財産分与請求権を行使することはできません。また、内縁関係の場合、生存する内縁配偶者の相続権は認められていません。
厳しい話ではありますが、内縁関係の場合に法律婚の場合と比較して生存配偶者への保護はかなり弱いものとなります。
6.重婚的内縁関係
重婚的に内縁関係とは、当事者の一方又は双方が法律婚の配偶者を有しているにも関わらず、内縁関係を成立させている場合のことを言います。
民法では重婚は禁止されているので、重婚的内縁関係についても公序良俗に反するのではないかとの問題がありましたが、具体的な事情に応じて重婚的内縁関係についても保護されるようになってきています。
重婚的内縁関係の不当破棄の場合であっても慰謝料請求は認められています。また、重婚的内縁関係解消に伴う財産分与が認められている裁判例もあります。